対話による吉田寮問題の解決を求める教員有志の会

「対話による吉田寮問題の解決を求める教員有志」による呼びかけ、関連情報などを掲載するブログです。

吉田寮訴訟の撤回と対話による解決を求める要請書

[2024/2/18追記]

「対話による吉田寮問題の解決を求める要請書」(2019年)を出した京都大学教員(元教員を含む)を中心として「吉田寮訴訟の撤回と対話による解決を求める要請書」を起草して、2023年7月20日に湊長博総長、國府寛司学生担当理事に提出しましたが、総長および担当理事からは「係争中」ということで回答がありませんでした。

2024年2月16日の京都地裁判決を受けて、新たな声明を準備中ですが、従来の要請書への賛同募集もさしあたり継続します。

要請書の趣旨にご賛同いいただける方は、 こちらのGoogleフォームりご賛同ください。教職員と学生と一般市民とを問わず、賛同を受け付けますが、とりわけ大学執行部の決定に対して責任を分有せざるをえない現役教員の賛同を広く集めたいと思います。お知り合いに京都大学の教員がいましたら、「あなたはこの署名に賛同しないのか?」と問いかけてください。


2023月7月20日

京都大学総長     湊  長博 殿 

京都大学学生担当理事 國府 寛司 殿

 

吉田寮訴訟の撤回と対話による解決を求める要請書

 

 2019年4月26日、京都大学執行部は吉田寮現棟(食堂棟を含む)からの立ち退きを求めて、20名の学生を提訴しました。大学当局がそこで学ぶ学生を提訴し、授業期間中であるにもかかわらず学生を法廷の場に引きずり出すという、極めて異常な事態が生じたことに対し、わたしたち教員有志は同年7月1日に「対話による吉田寮問題の解決を求める要請書」を提出し、訴訟の撤回と、寮自治会との対話による問題の解決を訴えてきました。その後、翌2020年3月31日に新たに25名が追加で提訴され、合計45名の寮生・元寮生が被告とされています。以後、現在に至るまで、吉田寮生たちは15回に及ぶ口頭弁論、2回の証人尋問への対応を強いられ、その都度膨大な時間と労力を投入させられてきました。その間、吉田寮自治会は一貫して大学当局との対話を求めてきましたが、大学執行部は対話に応じてきませんでした。
 2023年6月1日には、裁判上の和解を協議する場として進行協議が裁判官により設定されました。しかし和解は不成立に終わり、このままでは原告である京都大学が自ら裁判を取り下げない限り、10月5日にも最終口頭弁論が行われ、結審を迎えることとなります。学外に委ねられた裁判で、どのような判決が下されようと、大学側と学生の間の溝が決定的に深まり、将来にわたって大きな傷痕を残すことは避けられません。
 裁判の過程において、大学側が寮自治会とのあいだで締結してきた合意文書(確認書・確約書)の無効性を主張したのに対して、寮自治会側では寄宿舎に関する決裁権限を持つ副学長が合意文書に署名し、新棟建設・寮食堂の耐震補修にあたっては実際にこの合意に基づいて予算執行がなされた事実などを挙げてその有効性を主張、学生委員であった元教員も合意文書の作成過程に即して大学と寮との正式な約束であることを証人として証言しました。老朽化対策という点では補修案が具体的に話し合われてきたにもかかわらず、大学側が一方的に老朽化対策にかかわる話し合いを打ち切ったことが明らかとなりました。
 吉田寮は、すべての学生に就学の権利と機会を保障するための重要な福利厚生施設です。経済的な格差の拡大が深刻化するなかで、ますます大きくなりつつあるその重要性を、寮生である学生自身がこの間の証人尋問の中で何度も訴えていました。わたしたちは教室で学生と向き合う教員として、学生の訴えに真摯に耳を傾けるべきだと思います。
 わたしたちは、原告・京都大学が、吉田寮現棟明け渡し訴訟を直ちに取り下げ、寮生たちと対話による解決を図ることを強く要請します。

 

呼びかけ人(2023年10月3日10時現在。あいうえお順。*は前回の呼びかけ以後に退職または転出した元教員)
浅利美鈴、芦名定道*、足立芳宏、安部浩、石井美保、伊勢田哲治、伊藤正子、岩谷彩子、大河内泰樹、大澤直哉、岡真理*、岡田温司*、風間計博、梶丸岳、川島隆、川濵昇、木村大治*、小関隆、小林哲也、駒込武、小山哲※、酒井敏*、阪上雅昭*、佐藤公美、佐野泰之*、塩田隆比呂*、清水以知子、重田眞義*、高嶋航*、高山佳奈子、立木康介、ティル・クナウト、中嶋節子、中筋朋、西牟田祐二*、福家崇洋、藤原辰史、細見和之、松本卓也、水野広祐*、ミツヨ・ワダ・マルシアーノ、宮地重弘、横地優子、和久井理子

 

吉田寮訴訟をめぐる主な出来事(2015年~2023年)

 

2015

2月12日

杉万俊夫学生担当理事副学長が吉田寮自治会との団体交渉において「確約書」を交わし、吉田寮現棟の老朽化対策について「大学当局は吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する。」「入退寮者の決定については、吉田寮現棟・吉田寮新棟ともに現行の方式を維持する」ことなどを約束する。

2017

12月19日

京都大学が「吉田寮生の安全確保についての基本方針」を公表、吉田寮現棟老朽化の下で「可能な限り早急に学生の安全確保を実現する」ことが緊急の課題であるとして、新規入寮の停止と全寮生の退舎を求める。

2018

8月28日

川添信介厚生補導担当副学長が「「吉田寮生の安全確保についての基本方針」の実施状況について」を公表、吉田寮自治会と大学当局との間におこなわれてきた団体交渉について「衆をたのんだ有形無形の圧力の下」に行われたものであり、歴代の学生部長・副学長による「確約書」への署名は「半ば強制された」ものであるから、「確約書」の内容に「本学が拘束されることはない」という見解を示す。       

2019

2月12日

京都大学が「吉田寮の今後のあり方について」を公表、現棟(食堂棟を含む)の立入禁止を宣言するとともに、6条件(「寮生又は寮生の団体として入寮募集を行わないこと」「現棟に立ち入らないこと」等)を認めた場合にのみ新棟への入居を認めるという見解を示す。

2月14日

京都大学教員有志、「吉田寮問題にかかわる教員有志緊急アピール」を公表、「中断中の吉田寮自治会との対話を再開させること」「全寮生退去の方針を見直すこと」「新棟の継続利用と自治寮としての慣行を認めること」「現棟の耐震化を含む今後の利用法について吉田寮自治会と協議することの4項目を求める。

2月20日

吉田寮自治会が「表明ならびに要求」を公表、2条件(食堂棟の利用と清掃・点検のための現棟立ち入り)が認められるならば全寮生が新棟に移転するという見解を示す。

3月13日

川添信介厚生補導担当副学長が「吉田寮自治会の「表明ならびに要求」について」を公表、吉田寮自治会が提示した2条件を拒否、新棟への居住移転については大学執行部が提示した6条件を認めることが前提という見解を示す。

4月26日

京都大学「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の提起について」を公表、20名の学生を被告として京都地方裁判所に提訴。

4月27日

京都大学教員有志、「京都大学執行部による吉田寮生提訴にかかわる緊急抗議声明」を公表。

5月27日

川添信介厚生補導担当副学長が「吉田寮現棟の明渡請求訴訟について」を公表、提訴の理由として、度重なる退去通告に従わなかったことなど現在の吉田寮自治会は「責任ある自治」の担い手とみなしえないという見解を表明。

7月1日

京都大学教員有志、「対話による吉田寮問題の解決を求める要請書」を公表、「吉田寮現棟明け渡し訴訟を直ちに取り下げること」「現寮生の新棟への居住移転と旧食堂棟の利用を認めること」「管理・運営上の問題については、居住移転により「寮生の安全確保」を図った後に、寮自治会との対話により解決すること」を求める。

7月4日

京都地方裁判所において第1回口頭弁論。

7月16日

尾池和夫元京都大学総長、インタビュー記事(広瀬一隆「京都大吉田寮問題とはなにか―大学自治の行方」『SYNODOS』)において、大学側が吉田寮自治会とのあいだで積み重ねてきた確約書を「半ば強制的に結ばされたこともあった」という理由で反故にしたことについて、「勝手に何を言ってるんや。歴史を書き換えるのか」という疑問を提示。

2020

3月31日

京都大学、25名の学生を被告として京都地方裁判所に追加提訴。

2023

6月1日

京都地方裁判所が、裁判上の和解について協議するための進行協議の場を設定。和解は不成立。