対話による吉田寮問題の解決を求める教員有志の会

「対話による吉田寮問題の解決を求める教員有志」による呼びかけ、関連情報などを掲載するブログです。

吉田寮明渡請求訴訟の第一審判決を受けての声明

京都地裁における吉田寮明渡請求訴訟の第一審判決を受けて教員有志としての声明を発表し、教育推進・学生支援部厚生課を介して湊総長、國府学生担当理事あてに声明文を提出し、総長、担当理事と教員有志の懇談を申し入れました。

この声明について、教員として、職員として、学生として、市民として、今日の大学のあり方に関心を持つ者としてご賛同いただける方を募集しています。中でも、相対的に大きな権限と責任をもつ教員の方にはできれば呼びかけ人に名前を連ねていただきたいと思います。学生、職員、市民の方々、ぜひ知り合いの教員にこの声明への賛同を求めてください。

賛同はコチラのフォーム(https://forms.gle/wizeUgNKwJPG7Vt59)からお願いします。

[3/1 17:00追記]吉田寮自治会も、京都大学も控訴したと報じられています(NHK News)。この点について、吉田寮自治会は「今回の控訴は、あくまで大学当局の不当な訴訟提起に対する対応として行うものであることをご理解いただきたいと思います。大学当局との間で話し合いが成立し、問題解決の糸口がつかめたならば、控訴を取り下げる用意はあることを表明します」という見解を表明しています(「吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟第一審判決において敗訴した寮生被告の控訴について」)。

教員有志によるの声明は「控訴するな」を「控訴を取り下げよ」と読みかえた上で、賛同の呼びかけを続けます。


2024年2月22日 

京都大学総長     湊  長博 殿

京都大学学生担当理事 國府 寛司 殿

                                                                   

対話による吉田寮問題解決を求める教員有志の会

 

吉田寮明渡請求訴訟の第一審判決を受けての声明

 

 2月16日(金)15時より、京都地方裁判所にて吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟の第一審判決が言い渡されました。

 すでに退寮している元寮生23名、および京都大学が新規入寮募集停止を求めた2018年1月以降に入寮した被告3名については、現棟からの明渡し請求が認められました。一方で、被告となっている寮生および元寮生のうち、現在寮で生活する寮生14名については、京都大学による明渡し請求が棄却され、継続的に居住することが認められました。被告側の弁護士は「80%の勝訴」と語っています。退去をめぐる仮執行の対象とされたのは実質的に退寮済の元寮生のみであり、現在の寮生については仮執行宣言はなされませんでした。

 判決理由は、次の3点において画期的なものといえます。第1に、1971年頃から吉田寮自治会が「法人格なき社団」すなわち法的主体であると認め、吉田寮自治会と京都大学の間で交わされてきた確約には法的効力があり、吉田寮自治会が入寮選考権を持っていたことを確認しました。第2に、吉田寮の使用目的として、寮生たちが自治会による自主運営に大きな意味を見出していることに意義を認め、学生寄宿舎という福利厚生施設である以上、代替宿舎の提供をもってその目的が達成されるとはいえないと結論づけました。第3に、個々の学生と京都大学のあいだには使用貸借契約が成立しており、現在の老朽化の程度はこの契約を一方的に解除するやむをえない事由にはあたらないと認めました。

 大学側の高圧的な姿勢の論拠を排斥し、対話の価値、自治の価値、ともに暮らしともに成長する価値、場所を生きることの価値を認めさせた歴史的判決であったと言って過言ではありません。

 2月16日の京都地裁には、平日の日中であったにも関わらず、数多くの傍聴希望者が駆け付けました。寮生、元寮生を含む大学関係者はもとより、市民と地域社会、さらに他大学で同じ問題に直面する学寮関係者までもがこの訴訟を見守り、寮生たちを応援していたことの証です。自身が学ぶ大学側から提訴されながらの厳しい日常にあっても、寮生たちが一つ一つのことばをつむぎ、人から人へと伝えてきた「対話」の価値というメッセージが、人々の心にしっかりと伝わり、導かれた判決だと言えるでしょう。

 この第一審判決は寮自治会に入寮選考権があったことを認め、さらに老朽化を理由にした使用貸借契約の解除を無効としながらも、2017年12月以降の入寮については京都大学との間の契約が成立していないとしました。この点については、京都大学と寮自治会の対話により入寮募集停止というハードルが取り除かれることを期待して、あえて残された「余白」とみることもできます。

 私たち「対話による吉田寮問題解決を求める教員有志の会」は、2019年に京都大学が吉田寮生を提訴して以来、学内での対話による問題の解決を求めてきました。私たちは、京都大学が、第一審判決を真摯に受け止めて控訴を断念し、一刻も早く吉田寮自治会との対話を再開することを求めます。これ以上、大学が学生たちの修学を妨げ、多大なエネルギーの消耗と精神的苦痛を強いることは許されません。同時に、学生の安全確保を真に望むのであれば、5年におよぶ裁判のために放置されてきた寮棟の補修や耐震補強について早急に吉田寮自治会と合意を形成し、ただちにとりかかることを強く要請します。

 

呼びかけ人(2024年3月11日12時現在。あいうえお順。*は元教員)

浅利美鈴、芦名定道*、足立芳宏、安部浩、石井美保、伊勢田哲治、伊藤正子、岩谷彩子、大河内泰樹、大澤直哉、岡真理*、岡田温司*、風間計博、梶丸岳、川島隆、川濱昇、木村大治*、小関隆、小林哲也、駒込武、小山哲、酒井敏*、阪上雅昭*、佐藤公美、佐野泰之*、塩田隆比呂*、清水以知子、重田眞義*、白岩立彦、高嶋航*、高山佳奈子、玉川安騎男、立木康介、ティル・クナウト、中嶋節子、中筋朋、西牟田祐二*、廣野由美子、福家崇洋、藤原辰史、細見和之、松本卓也、水野広祐*、宮地重弘、横地優子、和久井理子